ジャズベースの口説き方

ジャズベースとjaco pastoriusをこよなく愛する、Webライターによる改造日記。ジャズベースから好かれる男になるためのモテテクhow toを面白おかしく、真面目に発信していきます。※女性ではなくジャズベースからモテるためのブログです。

手練手管でジャズベも嫉妬!?〜話題のブラジルベーシスト〜

江戸の時代、遊女たちはあの手この手で、客の心を掴んで離しませんでした。
簡単には落ちたりせず、時には他の客を褒めて嫉妬心を煽ったり、

最近気付いたのですが、私のブログはやれ知識だの、技術だのと、ジャズベの花魁かのような内容が多いわけです。ならば、花魁からモテテクを学べば…

という訳で今回はジャズベを弄らず、音楽レビューなんぞをね、
たまには向こうから「弾いて!」と言われるまで耳だけで楽しむことをして嫉妬させてやろうという魂胆で御座います。

世間はオリンピックで盛り上がっていますね。日本の代表選手のみなさんもメダルを獲得されたり、陸上リレーは特に燃えましたね。
そんなオリンピックの開催地ブラジルのベーシストを紹介するのには、今はこの上ない機会だと思うのでお付き合い下さい。


今回取り上げるベーシストは今何かと話題のThiago Espirito Santo
ギタリストYamandu Costaの2005年来日公演でthiagoがベースを弾いています。
Yamandu Costa ao vivo - Full - Completo - YouTubeyoutu.be

うーん、Yamanduの超絶ぶりもさることながらThiagoのベースも素晴らしい。
動画をご覧になった方はお気づきかと思われますが、
そう、このベーシストも何を隠そうJaco Pastorius直系ベーシストなのです!

注:このブログはJacoとジャズベースで8割を構成しています



そのthiagoが2014年にリリースしました

「Alma de Músico/Musician’s Soul」

こちらのアルバムのレビューになります。

参加メンバーは
Thiago Espirito Santo(bass)
Fábio Peron (bandolim)
Mestrinho (acordeon)

収録曲は

1.Contemplando
2.Agora Pense
3.Waltz For Todd
4.Sonhando Acordado
5.Maraconde
6.É Isso Aí!
7.E Foi, É
8.Goiás - São Paulo
9.Pastorius’s Victory

Alma de Músico | Musician's Soul by Thiago Espirito Santo | Free Listening on SoundCloud

文字だけではアレなので、soundcloud等で流しながらお読み下さると楽しめるかと

では

1曲目

バンドリンがメインメロディーを奏でます。
ベースソロは2:09~
フレットレスの和音使いから早弾きまでJacoらしくもあり、なにより音の粒立ちが良いです。
バッキングではゴーストノートの挟み方がが心地よく、ドラムレスな事を思わせません。3人編成とは思えない音の密度です。

2曲目

こちらはメインをアコーディオンが務めます。
少しアタックの強いベースの音が曲に推進力を与えています。
ベースソロは1:20~
スライドの連続で不思議なフレーズから始まるソロ
曲自体も2:12と短い曲ですが、音があちこちに散っていて愉快です。

3曲目

スローな曲調をバンドリンが儚げに歌い上げます。
ここでハーモニクスも初登場。バッキングでハーモニクスを織り交ぜ、音に広がりを与えます。
ベースソロは4:29~
歌心たっぷりのソロ。最高音のみピッキングハーモニクスで鳴らしているのですが、ここが絶妙にハマっていて、音の減衰からなにから完璧です。
その後の溜めの多い和音スライドダウンや、Jacoのお得意のフレーズなんかも出てきて、思わずニヤリとさせられます。

4曲目

ド頭のE開放、音の迫力が「Jaco Pastorius」収録の「Continuum」に近いものを感じました。

余談ですが、
この「continuum」の最初の一音のE開放の音作りに私は3年近く費やしました。鐘のような澄んだ低音の響きがなかなか出せず、キャパシタを交換したり、ピックアップを交換したり、プリアンプを購入したり…。思えば、改造に意図を持った本格的な一歩だったかも知れません。
しかし、なかなかこの迫力が出ない。
なんというか、この一音はとても凄味があり、一気に曲へ引きずり込まれるような、そんな音像を持っていると感じるのです。音の塊が直接脳ミソを揺らすような、地響きにも似た感覚といえば伝わるでしょうか。
この音は最終的にBarchie’sさんに置いてあるacoustic122を弾かせていただいた際に、割と簡単に出せました。低音の響きのミソはアンプだった、というオチです。

本当に関係ない話でした。

とにかく私はこの曲の1音を聴いた瞬間に、このアルバムを買って良かったと確信しました。
この曲はカホンのようなパーカッシブな音がキメの後に入ってきます。うーん、でもゴーストノートのような気も…。
この音、実はベースなんですね。
thiagoがよくやるテクニックなんですが、左手のタッピングだけでベースラインを弾き、右手はネックエンド側の指板上を叩いて出しているんです。叩いて弦が指板に触れた時に出るバズがスネアのような効果を出していて、一個の楽器で同時にリズムを作ってしまう、まさにリズム楽器として使っているんですね。ユニークながらも実用的で、音楽として上手く取り入れています。
こちらのインタビュー動画
AER - Thiago Espirito Santo - one of the acoustic people - YouTubeyoutu.be

1:46辺りにその映像が出てきます。

ちなみにギターを弾いているのはArismar Do Espirito Santo。Thiagoのお父さんです。使用ギターはibanezGeorge Bensonシグネチャーモデルだと思われます。彼もまたマルチプレイヤーでして、7弦ギターから6弦ベース、コントラバスまで使いこなすミュージシャンです。スキャットしているので、より息遣いが伝わってきます。
ベースソロは2:40〜
お父さんのソロに呼応するかのように、この曲のソロはアルバム内でもかなりの熱量を感じる素晴らしいソロです。速いパッセージでありながら起承転結のあるメロディーラインにthiagoの音楽性を感じる事が出来ます。
アルバムでもイチオシの一曲!

5曲目

スパニッシュなナンバー
バンドリンとアコーディオンのユニゾンがどこかビバップ、というかDonnna Leeかな。
バンドリンのソロが超絶です。呼吸すら忘れさせる疾走感。
ベースソロは2:46〜
ここでもjacoのような上昇フレーズを使っています。
最後の倍速になる前に入っているパーカッシブなサウンドもベースのピックアップの上辺りをミュートしながら叩いている音です。

個人的な定義なのですが、jacoフォロワーと言われているベーシストの中でも、瞬間的にjacoの常套フレーズを音楽的に機能するように引き出せるプレイヤーが本物だと思っています。露骨ではなく、優れたフレーズだからこそ、さりげなく取り入れる。音作りや見た目なんかは誰でも取り入れられますが、消化して完全に自分の音としてアウトプットできるプレイヤーは限られています。
多くのjacoフォロワーの中でも頭一つ抜けているthiagoはそういった部分で本当にjacoを消化していて自分のものにしていると思います。
多くはjacoのその個性に食われる事が多く、とてもリスキーなベーシストの壁でもあるのですが、一流プレイヤーは現代に見事にマッチさせているんですね。

私が現代のjacoフォロワーと言われるベーシストに着眼しているのは、jacoのようなベーシストが見たいから、という気持ちよりも、
どのように消化して自分のものにしているか新しいサウンドを構築するのかという期待が大きいです。
jacoフォロワーという言葉も便宜上使っていますが、本来ならば避けるべき言葉です。
それはアーティストに敬意を払う意味でも、そうやって型に嵌めてしまうことは危険に思えるからです。
彼らはjacoを目指しているのではなく、その先を見据えているんでしょうね。

現代はそんな世代交代の時期に差し掛かっていると思います。どんな新しいプレイヤーが生まれるのか見守っていきたいですね。

曲の解説?に戻ります。

6曲目

お料理番組で流れていたらノリノリになれそうな・・・急に語彙を失いました。

ベースの16分の細かい刻み。thiagoもピッキングがとにかく綺麗です。
これはフレットレスベーシスト、織原良次さんがベースマガジンの連載で言及されていたのですが、jacoの無駄のないピッキングフォーム(通称トニー奏法)を取り入れたベーシストとして、Hadrien Feraud、Dario Deidda、Thiago Espirito Santoを挙げて比較されていました。
トニー奏法の賜物とも言えるこの粒立ちの良い音は16分で真価を発揮します。非常に基礎的でありながら、理に適った奏法なので、映像でも確認下さい。
Thiago Espirito Santo na EM&T - YouTubeyoutu.be


0:28辺りからリアピック上にピッキングを変えます。


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動画のスクリーンショットなので画質は粗いですが、無駄のないフォームなのがお分かりかと思います。

織原さんの連載もjaco好きならずともベーシストには大変興味深い記事を書かれているので要チェックです。

ベースソロは3:26〜

7曲目

こちらはSilvia Goes、thiagoのお母さんの曲です。才能溢れる音楽一家ですね。
お母さんはピアニスト兼コンポーザーです。0:36からのピアノソロを弾いています。
ベースソロは2:20〜
頭の上昇フレーズだけでいくらでもご飯が進んでしまう…。ここまで全楽曲でソロを弾いていますが、全く底が見えません。thiagoもマルチプレイヤーですので、ベースの引き出しもとても多いです。
ただ速いだけではない、全体の見えるソロを聴かせてくれます。

8曲目

ボイスパーカッションのような、ボーカルから始まる一曲。
頭にそのまま流して行くとパーカッションがリフレインして聴こえてきます。
そしてこの曲、キメのユニゾンは複雑でテンポもかなり速いです。
代わる代わるソロを取っていくスタイルが曲調とマッチしていて、情報が次々と流れ込んでくる忙しない曲です。
ベースソロは1:47~
シメのフレーズがカッコイイです。
2回目のソロは2:27~
キメのあとにまたパーカッシブタッピングで盛り上げます。

9曲目

このアルバムを締めくくるのは「Pastorius's Victory」
ハーモニクスをメインに使ったベースのソロ曲
面白いのは、メインのハーモニクスのメロディーが常になっている中でフィルに実音でフレーズをぶち込む手法。
そしてリズムパターンが変わってゆくのも面白い点。ハーモニクススライドを自然に使っていますが、上手く馴染んでいます。
最初メロディーを聴いた時にJacoよりもVictor Wootenが浮かんできましたが、ThiagoなりのJaco解釈曲なんでしょう。
怪しげなブリッジパートで終わる感じが続きを期待しまいます。
最後にこの曲を持ってくるというのもまた・・・。

全体の感想

とてもアコースティックなアルバムです。
thiagoのソロとしては最新のものになります。
そして驚く事に、これだけ濃い内容なのに一周があっという間です。気を抜くとスルスルと流れていってしまいます。
3分~5分とそこまで極端に短い曲も少ないのですが、気づけば5周目なんてことも。

バンドリンという楽器が全体を通して前に出てきますが、人によっては疲れるかもしれません。副弦楽器なので、普通の弦楽器よりも一フレーズの情報量も多いです。

しかしThiagoの才能は恐ろしいですね。

こちらのアルバム曲はsoundcloudでも公開されておりますので、是非ご試聴していただいてから音源の方を購入してみて下さい。

おわりに

最近パソコンのデータが吹っ飛んだことをきっかけに再びCD収集熱が沸き起こっております。
やっぱり、アーティストを応援する意味でも、ファンとしても形に残るCDあるいはレコードの類は買うべきだなぁと感じるこの頃。
それこそiTunesで音源データだけ買うこともできる手軽で便利な時代です。中には購入しないでアップロードされたものを聴く程度で終わり。
それでも困らないでしょうが、なんとも味気ない…。

勿論、日本で流通していないようなものをわざわざ取り寄せるのは手間ですが、私はそういったワクワク感が好きなので未だにアナログな生き方をしています。

あ、でもこのCDは輸入しなくても
iTunes

Sonhando Acordado

Sonhando Acordado

Amazonで買えますよ!
Alma De Musico by Thiago Espirito Santo (2014-03-15)
便利ですね〜

メタルバンドANGRAのギタリスト、Kiko Loureiroとも共演しているので、そちらに詳しい方も名前は見た事があるかも知れません。
pipoquinha君ともよく演奏しています。
pipoquinha君はこの動画が有名ですね(笑)
Michael Pipoquinha - YouTubeyoutu.be


その少年も勿論素晴らしいプレイヤーになってます。
Thiago Espírito Santo e Pipoquinha - Isn't She Lovely - YouTubeyoutu.be


オマケ

Thiagoのギターの腕前も一流です。
33:49からギターに持ち替えています。

Masterclass Thiago Espirito Santo na Ctape SJC-SP - YouTubeyoutu.be



慣れないレビューをやってみましたが、難しいですね。
でも耳でインプットした情報を文字でアウトプットする作業は面白いです。
拙いレビューですが、みなさんがまだ見ぬ?素晴らしい音楽を知る架け橋になれれば幸いです。
次はもう少し音楽理論的な観点から切り込んでいけたらもっと充実するかな。

近々Twitterの方で毎日うるさく呟いているベーシストについてもまとめたいと思います。


では