先日、ずっとお会いしたかった方に会う機会がありました。 SNSの発達で、知らない人と知り合うことも増え、そのほとんどが顔も分からない人なのですが、趣味の中でも、更に嗜好の近い人となるとネットが浸透した世の中で良かった、と感じます。
さて今回は、アウトボードプリアンプについてです。 ベーシストという生き物は、スタジオに置いてあるアンプの種類がほとんど変わらないことで、アレルギーを持っている人も多いんですね。
例えば、一番多いであろうアンプがアンペグ。 個人的には可もなく不可もなく、アンペグは低音がムワーっとして高音がキンキンしている印象です。良くも悪くもアンペグの音、って感じに鳴ります。バンドサウンドだとそこまで気にならないのですが、一本で弾くと無味というか、個性のない個性が際立ちます。 ピック弾きだとメリハリがあっていいのですが、指弾きで、フレットレスとなるとなんだか物足りない。耳馴染みのある音なので、安心感はありますし、ベーシストであれば、必ず使う事になるアンプ。 多い故に苦手意識のある人も多いです。
ついで、トレースエリオットですかね。 トレースはモコモコ、ボワボワした感じで、ゲインをあげると直ぐに割れてしまう個体が多いように感じます。キャビネットが弱いのかな。 好きな人は好きだけど、苦手な人も多いのでは?かくいう私は、抜けが悪くて最近苦手になりました。学生向けのスタジオに備え付けられているイメージ。 主観で申し訳ないですが、アッシュダウンの良いところ無くしたみたいなイメージです。
ギャリエンは逆にバッキバキなんですけど、なんか違うバキバキ感といいますか、歪みと合わせて初めて使えるアンプみたいなイメージがあります。スラップ好きな人は、ギャリエンが好きな人も多いと思いますが、指弾きのジャリジャリした感じは個人的には苦手です。
文句ばっか言って、じゃあ何があったら満足なのかと申しますと、
そりゃもうAcousticですよ。 またジャコですよ。ジャコのことしか書かない訳ではないのですが、やはり何かと目指すものとなると出てきてしまいます。
モデルは360。とは言ってもそんなスタジオなかなかないもので、昔どこかで見かけた記憶はあるのですが、楽器屋さんにもなかなか出回らないもので、弾く機会もそうそうない。 最近220を試奏しまして、買ってもいいとまで思ったのですが、車に積めないサイズで、家に置いておくだけでなくライブやスタジオで使いたいと考えていたので、泣く泣く諦めました。 ちょっと前にバーチーズさんに置いてあった122が、サイズ感といい、音といい最高であったのですが、それも運悪く、買おうと決めた時には売れていたり…。
好きなアンプはあるのに、スタジオにもライブハウスにも置いてない。アンプを持ち運ぶのは、足がない。
わがままなプレイヤーの願いを叶える夢のエフェクター。それがプリアンプ。 憧れのジャコに近づくために、いろいろと試行錯誤してきましたが、アンプはなかなか売ってない時に出会ったのがJ-boxです。
J-box
こちらはFernandesが1980年代にacousticの代理店をしていた際に出した360のプリ部分をアウトボード化したものでございます。
ずっとそういったプリアンプと呼ばれるものに抵抗があったのですが、ジャコの音が出るかもしれないとあれば買わない手はない。
とは言ったものの、生産終了モデル故に市場に出回る数も極端に少ないんです。 高騰化してしまって、4万超えなんてこともあったのですが、私は運良く相場で買うことができました。
という話が4年前くらいですかね。
結構前に手に入れてはいたのですが、あんまり気に入るようなサウンドも出ず、しかもノイズが気になる。そしてでかいんですよ。 食べ盛りの男子学生のお弁当箱くらい。
長らくボードの肥やしと化していて、最近はもっぱらBIAS FXばかり。
こちらも馴染みのない方には、抵抗のありそうなものですが、iPadを使ったコスパ最強のアンプモデリングアプリでございます。
最近のライブなんかだと大抵こいつをラインで送って、ベースだけ音が上から降り注ぐ、というよくわからないバンドサウンドでの浮き方をさせているのですが、詳しくは別エントリーで。
今回はJ-boxについて書きます。
このプリアンプのインプレッションとしては、繋ぐだけで古臭いサウンドという点。 中音域が独特でして、acousticといわれればそうなんだけど、普段みなさんが使うようなサンズアンプやアルビット、エデンなんかとはまた違うタイプの音色の変化をするので、「なんだこれ」という感想。泥臭さと無骨な見た目は最高です。
急激な変化ではなく、ほんのりビンテージ感。 EQの効きはまずまず。失敗かと思っていたのですが、ブライトスイッチなるものを押すと激変。 確かにジャコサウンドに近づきます。
カリカリ感が足りない気もしていたのですが、先日購入したフラートーンに通すと結構凄いサウンドが出るんです。 それまでは、エボニー指板で、値の大きなキャパシタを搭載したフレットレスということもあったのですが、音の抜けが気持ちいい。 個人的には、スタジオでもアンペグに繋ぐのではなく、ジャズコに繋ぐのがベストだと感じました。 スタジオのジャズコってキャスターがついていて、地上から浮いているものが多いと思うのですが、そのスピーカー位置が絶妙に腰高なローの鳴りになって、古い雰囲気が出ます。
J-box本体の操作としては、5バンドのグラフィックイコライザー(40hz、100hz、200hz、300hz、400hz)
とオーソドックスな3バンドのパライコを搭載。
そして一見ボタンに見える謎のブライトレベルというツマミ。
Hi、lowのインプットとアウトプット、その間に更にブライト感を出す為のブースト機能がついております。
EQのトレブルを上げてやると少しカリッとした感じで、更にブーストさせるとジャコに近づくので、常にブライトはオン状態。というのも、一度ブライトスイッチをしってしまうとオフの状態が物足りなくなるんです。依存してしまいます。
フラートーンにはバッチリハマったので、晴れて再び日の目を見ることができたJ-boxなのですが、この間横浜で開かれたベース会に、ハンドメイドのacoustic360をお持ちの方がお越しになりまして、めでたくも、世のプリアンプでも珍しいacousticモデルの新旧プリアンプが並んだ訳です。
こんな機会もなかなかないことですので、嬉しい限り。
こちらのViva analogというプリアンプについては、個人的に入手後にいろいろ書きたいと思っているのですが、EQの効きがかなり良くてですね、音作りの楽しさはアンプをいじっているような感覚な訳です。 それくらい良くできた代物。完全にJ-boxが負けていました。モデルは違いますが、経験則上では、220をいじった時のような高揚感が近いですかね。モダンビンテージというとなんだかわかりにくいですが、綺麗にビンテージのトーンを再現してくれて、解像度の高いイコライジングとでもいいましょうか。
しかもファズ回路も入っているんです。こいつが強烈で、slangを完全再現できる。これにMXRのアナログディレイ(容量マックス)があれば限りなく完璧に近い。 Variampの謎は残念ながら体感しにくいもので、解決できませんでしたが、迫力のあるローサウンドに、カリッと仕上がるハイのニュアンス、そして甘く伸びる中音域。焼きプリンのような、音域のミルフィーユが聴くものを魅了します。
ジャコファンならずとも、ジョン・ポール・ジョーンズ好き、60−70年代好きベーシストには垂涎もの。
ビンテージの360は弾数も少なく、大抵がノイズまみれだったり、実践向きではないものも少なくはありませんので、acousticのサウンドが好きな方は、Viva analogの購入を検討されても良いかもしれません。 J-boxも勿論良いんですよ。けど、比べたら負けました。似たような価格ではあるので、これから購入を考えているのなら、圧倒的にViva analog! その名の通り、ビバ、アナログ!です。 時代に逆行するものは魅力的。
ただ、比べてみて、かなり近いサウンドは出せたものの、ジャコ狂いには何かもの足りない。 新たな課題発見能力は人一倍優れていますので、簡単に絶賛はしません。
Acousticの独特なサウンドの秘密は、どうやら361キャビネットに依るところが大きいようで、あの特殊なアルミコーンの配置(中央逆さ向きだったか、失念)を考慮した上で、サウンドを作り込まないことには、究極的とは断言できないのです。
Talkbassなどのサイトでもよく話題になっていますね。
ジャコの音探しの旅は、まだまだ先の見えない道のりのようです。 ゴールが見えても難癖つけて先に伸ばすから終わらない。悪い癖です。
そんなちょっと変わったプリアンプのお話でした。
それにしても実践向けで、ここまでキャラの立ったプリアンプはあまりありませんので、周りのベーシストに差をつけるにはもってこいです。正直、サンズアンプなんかは飽和状態で、繋げば大体同じ音。ピック弾きベーシストの3種の神器に入るくらい今ではポピュラーなアイテムで、私は食傷気味です。 ゴリゴリのピックサウンドも魅力的ではありますが、あのブリっとした70年代のピックのサウンドは、acousticのプリアンプの持ち味でしょう。
こんな可愛いデザインもあります。
では。